中国製の1トントラックが日本に入ってくる。驚異の存在になるかといえば「ならない」です
京都のベンチャー企業『フォロフライ』が設計し、中国の東風汽車関連の『東風小康汽車』で1トン積み電気トラックを生産し、物流大手のSBSホールディングスに1万台規模(他メーカーで生産する1.5トン積みも含む)供給するというニュースを日経新聞などが伝えている。価格は補助金無し400万円を少し切る程度を考えているという。フォロフライは京都大学系。東風は日産などの技術を持つ。
実はこの手の企画で作られた車両をいくつか知っている。設計は素晴らしい。クルマの仕上がりも新車で見たら納得できるレベル。価格は車両価格と補助金、安いランニングコストなど考えると、同じクラスの1トン積み車と同じくらいになる。1トン積みといえばハイエースと同じレベルですね。ここにきて配送にカーボンフリーの電気自動車を求める企業が出てきたので、それなりの需要はあると思う。
この流れを受け「電気自動車で出遅れた日本車メーカーは早期に巻き返さないと国内市場を奪われかねない」そうな。実際、直近の数年は「電気自動車を配送に使わなければならない」と指定されている企業の荷物を運ぶための”1~2万台規模となる小さな国内市場”は奪われることだろう。けれど今のハイエースや1.5トン積みトラックの取って代わるかとなれば不可能かと。トラックのニーズ、そんな甘くない。
なぜか最近ハイエースに詳しくなった。おそらくジャーナリストとしちゃ一番詳しいと思う(笑)。ハイエースの寿命ってどのくらいだと考えますか? 平均的に100万kmは走っているらしい。日本で10~20万km使われ、海外へ輸出されていく。そこでさらに100万km以上使われるというのが普通のハイエースだという。エンジンはディーゼルならOH無しで100万km。ガソリンでも50万km走るようだ。
エンジンより強靱なのが車体。ハイエースの車軸に使われているベアリングのサイズときたら「何でこんな大きいの?」と驚くほど。車体の強度だって日本の法規を守って50万km走ったくらいじゃ新車のままと言って良いくらい頑丈。アフリカで活躍しているハイエースの動画を見たけれど、15人+屋根に荷物を満載し、未舗装路を含む路線バスに使われていた。壊れないのはハイエースとハイラックスだけ。
つまり日本製のトラックは途方も無い寿命を含めた価格なのだった。中国製の電気トラックを見ると、とうていそんな使い方に耐えると思えない。規定+αの積載量で20万km程度の距離を走るクルマを想定しているからだろう。1万台規模の生産台数だと丈夫で信頼性の高いクルマを作ろうとしたら相当のノウハウも必要。そうこうしているウチ、日本の自動車メーカーからタフな電気トラックも出てくるかと。
私が脅威に感じている中華電気トラックは、400万円などという日本車と競合する価格帯の1トン級じゃない。軽トラックと同等のサイズで70万円を切るようなモデルです。軽トラック級で10年/10万kmの寿命を持っていたら、ガソリン代と電気代の価格差や税金、補助金、ガソリンスタンドに行かないで済む利便性など総合して考えたら驚異の存在になるだろう。安くて高性能じゃ無いと使い物にならんです。
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