自動車メーカーの傾向と対策(あくまで個人的な見解です)トヨタ編

まずトヨタのDNAだけれど、皆さん実用性重視だと思っているようだ。「金太郎飴」と言われるように、どこを切っても同じみたいに言われてきた。しかし会社の生い立ちを見ると、少々悪意のある表現方法なら「お金持ち跡継ぎがカッコよい乗用車を作りたい」というところからスタートしている。豊田自動車の創始者は乗用車作りの「夢」を追ったワケです。

当時、日本の技術は低かった。いや、正確に言えばあったけれど優秀な人材や素材は航空機作りに回され、自動車の開発など夢のようなモノ。自動車といえば輸入車を意味した時代です。そんな状況でクルマ作りを始めたのだけれど、当然ながら苦労しまくる。戦争ニーズによりトラックを作りを押しつけられます。仕方なく作ったトラックも壊れまくった。

トヨダAA型

この時の反省が「金太郎飴」のトヨタを作ることになる。豊田喜一郎さんの実家である豊田佐吉さんは織物機(自動織機)で財をなした。織物作りで最も重要なのは不良品を出さないこと。豊田佐吉さんが作った織物の機械は徹底的にミスを出さないコンセプトだった。いまでいう「ポカヨケ」を徹底的に追求しており、そのレベルは世界TOPだったという。

不良品を出さないコンセプトがクルマに引き継がれたんだと思う。トヨタは信頼性を徹底的に磨いた。一方、販売についちゃ豊田喜一郎さんを信じた人達が頑張る。今でもトヨタのディーラーって直営店がほとんど存在しない。基本的に地場産業なのだった。創業からトヨタを信じ、持ちつ持たれつの関係を構築している。そしてトヨタ家との付き合いも長い。

2000GTの電気自動車

もう少し具体的に書く。千葉県は勝又グループがトヨタ車を販売してきた。以前トヨタが勝又グループ所有の2000GTを改造して電気自動車を作った。クルマ好きからすれば「稀少なクルマなのにもったいない!」。という旨の話を勝又家の方に言うと「うちのガレージには2000GTが7台あるんです。1台くらいトヨタのため使ってもいいと思いました」。

この話を聞き「そんなに持ってるなら1台くらいいですね」と答えてしまった(笑)。当時、スポーツカーなどあまり売れないだろうということで勝又グループが引き受けたらしい。レクサスLFAなどもトヨタ家とお付き合いのある企業が買ったと思う。自動車メーカーと販売店の協力関係の結びつきの強さで言えば、ダントツである。トヨタの財産です。

スポーツモデル作りはトヨタのDNAです

そんな信頼性の高さと金太郎飴の安定感でビジネスをしていたトヨタだったけれど、御存知の通り今や自動車業界は混沌としている。信頼性と安定性だけじゃ生き残れない。という時に社長となったのが今の社長の章男さんだ。就任直後、アメリカで大きな問題が起き、国内でもプリウスのブレーキ抜けなどで矢面に立たされた。これでトヨタは変わった。

社長が前に出るようになりました。そして面白いことに創業の原点である「楽しいクルマを作りたい」というDNAが出てきた。考えてみると楽しいクルマ作りのDNAはモータースポーツ参戦にも出ている。トヨタ、モータースポーツ参戦はホンダに出遅れたものの、第2回日本グランプリからずっと続けてきた。明確にモータースポーツ好きです!

今ならF1も健闘した?

サーキットからラリー、悪路を舞台に世界で行われている”ほぼ”全てのモータースポーツを知っているのはトヨタだけといってよい。ホンダの場合、ハッキリ「嫌い!」というジャンルがあるし、日産についちゃ「出ようと考えた社員の実力」次第。国内の競技を除くと、本格的な体制での参戦ってWRCの前の時代のラリーとル・マンくらいだったりする。

自動車産業が新しい時代を迎えるにあたり、トヨタはしっかり対応できているように思う。今まで説明した通り「新しい物事にチャレンジすること」こそトヨタのDNA。今の体制を見ると、好奇心の塊のように見えます。それでいて「ポカヨケ」の精神もキッチリ持つ。世界的な規模で様々な規制が始まるけれど、上手に対応できているように思う。

ここにきてトヨタ本来の姿が出てきたと思う

課題は「人事次第」ということになるかもしれない。今のまま自律できていれば盤石です。ただ頑丈な堤防も小さい穴から壊れると言うことわざがある。社長は頑張っていても、その下で悪代官が育つ心配はあります。「あんたに言われたくないよ!」と怒られそうだけれど、逆に言えば課題はそれだけ。人事のポカヨケできたら最高です。

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