eパワーは米国&ヨーロッパCAFEをクリア出来るか?

御存知の通りeパワーはエンジンで車軸を直接駆動していない。巡行時はエンジンで発電機を稼働させ、それをインバーターを経由させ駆動モーターに電力を供給させている。それぞれの熱効率を95%と仮定すれば、エンジン出力の90%を伝達出来るワケ。しかし実際はギアなどのロスもあるため、85%程度だと考えていい。一方、マニュアルミッションだと95%程度の伝達効率を持つ。

一方、トヨタのハイブリッドシステムは常にモーターを連れ回ししているから効率悪いという人もいるけれど、そんなことない。巡行時の伝達経路はマニュアルミッションと同じくほぼ直結である。だからこそエクストレイルはWLTC高速モードだと19.7km/L。対するハリアーHVは22.1km/Lという数字。ちなみにエンジンそのものの熱効率はトヨタA25A-FXSが41%。

A25A-FXSの熱効率は41%

日産によれば凝りに凝ったメカニズムを使う可変圧縮比エンジンKR15DDTの熱効率は50%に近いという。伝達効率が同じならWLTCの高速燃費はエクストレイル有利なハズ。なのに10%以上負けているということは、高速の伝達効率が私の予想と同じか、もっと悪いことになっているんだと思う。文頭に戻る。高速域での燃費が重視される欧米だとどうか?

KR15DDTの熱効率は50%に近いという

日産がPHVや電気自動車をたくさん売ればCAFE(企業平均燃費)は良くなるためeパワーを売ることも可能だと思う。ただトヨタのハイブリッドに勝てる魅力を出せるかとなれば厳しい。なかでも絶望的なのが欧米だと普通な140km/hくらいで巡航した時の燃費で、伝達効率の悪いeパワーはがっくりと燃費落ちてしまう。欧州についちゃブランドイメージも薄まる一方なので商品力無し。

アメリカも平均速度はけっこう高く、しかも一段と厳しいCAFEを打ち出してきた。エンジン車全体のシェアが落ちていく中、燃費でトヨタに負け、加えてPHVも持たない日産は厳しいと思う。ルノーによる「支配からの卒業」で自由な世界戦略が可能になったため様々な市場にeパワーを投入するかもしれないが、今のままの実用燃費&商品力だと競争力は無いと思う。

興味深いのが中国だ。今年5月23日にeパワーを搭載するエクストレイルを発売した。これが売れれば勝負出来るかもしれない。逆にエクストレイルの売れ行き伸び悩むようだと中国市場も二の矢は無い。三菱から技術を借りてPHVを出すくらいだと思う(日産独自のPHVは開発しているというウワサ無し)。今後エンジン車の生き残り合戦は激化する一方になる。

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8 Responses to “eパワーは米国&ヨーロッパCAFEをクリア出来るか?”

  1. yakusyo より:

    KR15DDTの熱効率は50% !
    学生時代に機械工学をやってた者には、生きている内には見られないだろうと思っていた数値だ。50%、本当? 日産凄いな。

  2. 猫まんま より:

    熱効率50%って素晴らしいですね。
    でも30年ほど前には日産マツダスバルは馬力詐欺の代表みたいなメーカーだったから不信感もあるかも?まあさすがに最近ではそんなことは無いと思いたい。
    素人考えですがPHVはグループ会社で兄弟車なんだからアウトランダーのものを使わせてもらえば良いしスポーツモデルはE-Tech使わせてもらえば良いんじゃないかと思うんですがそんなに簡単にはいかないんでしょうかね?ルーテシアのプラットフォーム使って新型キューブ作ってE-Techとか良いんじゃないのかな?まあ価格は跳ね上がるでしょうけど。
    ダイハツの自動ブレーキもそうなんだけどトヨタの100%子会社なのになぜに性能が悪い自動ブレーキを自社開発するのだろうか?開発費を抑えるためにも共通化するべきだと思うのですが何か事情でも有るのでしょうか?

  3. ring より:

    >欧米市場にeパワーを投入するかもしれない
    一昨年〜昨年にかけて、キャッシュカイe-POWERとエクストレイルe-POWERを欧州に導入済です。
    同セグメントのトヨタ車のHEVと現地カタログ燃費を比べると、国沢先生の予想通りか否かが分かりそうです。

  4. トヨタ車ユーザー より:

    エンジンからタイヤへの直接駆動がある点が、THSやe:HEVを助けています。私もTHSはエンジン・発電機が連れまわる点を昔は欠点だと思っていましたが、高回転域、モーターだと電圧をもっと上げなければならない時に逆に有利なものとなってきました。
    モータの回転をあげるには電圧を上げなければなりません。eパワーの場合、エンジン出力強化とともに発電機の電圧アップが必要ですが、そこに難点があるのでしょう。駆動用モータには巻き線界磁型を使って対策をしているので、発電側にもう一工夫が要りそうです。
    ただ、ラインナップ的には日産にPHEVがないのが不思議。エクストレイルとアウトランダーでかぶってしまう地域もありますが、それ以外のそれぞれの販路で売ったらいいと思ってました。

  5. はあ、レバノンのん より:

    日産は、ゴーンがレバノンに逃亡する前に決めたコトから、ほとんど進捗していないのではないでしょうか? 今の日産社長は、ルノーの支配から解き放たれたことでドヤ顔していましたが、縁を切った今となっては戦う武器が何もない。ルノーからHVを供給してもらう日も近いようです。そもそも供給して貰えないでしょうけど。全固体電池コケたら、日産コケた。

  6. ウメコ より:

    東風日産が、1.5リッター直噴エンジン搭載のPHEV前輪駆動SUVを販売すると記事に出ていましたが、これ日産初のPHEVですかねぇ…。で、あれば、日本やヨーロッパでも別ボディで展開したら、と思うんですが。

  7. miku より:

    ”KR15DDTの熱効率50%”はまったくの誤認識です。たぶん40%にも届いていないと思います。
    日産は KR15DDTの熱効率が50%と誤解させうる巧みなアナウンスをしますが、実際には 将来的に50%を目指すと言っているだけで、50%を達成するエンジン名、その時期ともに明示していません。

  8. 暇人 より:

    エクストレイルがe-powerでは最初の回生協調ブレーキ搭載車だと思うのですが、その後のセレナe-powerとその効果や今後の展開がどんな感じなのかどこかで触れて頂きたいです。

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