ルノー、日産の持ち株比率を43%から15%まで引き下げ。これ、良いニュースなの?

ニュースでルノーが日産の持ち株比率を43%から15%まで引き下げることを伝えている。多くのメディアは「支配からの卒業」という、まるで植民地支配が終わるように嬉しいニュアンスのようだ。本当だろうか? ニュースでも伝えているとおり、支配からの卒業には条件がついている。それはルノーが分社化する電気自動車メーカーへの出資を含む参加だ。

もはや欧州は電気自動車路線に突っ走っている。ルノーという自動車のメーカーの市場を見ると、大半が欧州。アメリカ市場無し。それ以外の地域は日産や三菱自動車のアライアンスで細々とビジネスを続けている感じ。フランス政府としちゃ電気自動車メーカーとなる新会社に軸足を移して行きたいこと明白。当然ながらルノーだけだとスケールメリット出ない。

そこで日産と三菱自動車を仲間に入れ、企業規模を広げようと画策しているのだった。目の前にぶらさげるニンジンが日産の悲願となっている支配からの卒業です。フランス政府からしたら縮小均衡策を取るルノーは赤字にならなければいい。日産とのアライアンスだって現状のままでなんら問題無し。そのうえ現在日産の株を28%分売却すれば6千億円ほどになる。

フランス政府は何の痛みも無く6千億円という電気自動車設立の資金を得られるワケ。さらに日産と三菱自動車が参入してくれたら、スケールメリット出るため開発費も生産コストも下げられる。フランス側からすれば大笑いの案件だ。問題は日本側にどんなメリットあるかです。そこを日産は深慮していると思う。ただ私からすれば、あんまりメリット無さそう。

というのもすでに日産や三菱自動車は欧州市場での存在感薄い。日産でいえば2021年度の欧州販売台数34万台。世界販売台数380万台の9%程度。しかも利益率極めて低い。そんな市場に大金を投資したって意味無し。電気自動車が必要になる北米はルノーが立ち上げる電気自動車会社とアライアンスを組んでも意味なし。問題になるとすれば日産最大の市場である中国だ。

2021年度の販売台数を見ると中国138万台で1位。2位アメリカの89万台。3位日本で43万台。中国を減らしたくない。そして中国と言えば電気自動車と政治力。なかでも後者は日本政府がてんで頼れないです。ここはフランスと組んでおいた方が全ての点で安心だ。どんな保険に入るより確実かもしれない。ということで日産はルノーが出してきた条件を基本的に呑むと予想します。

参考までにルノーは7千億円で日産の株を43%買った。28%分なら4500億円。今回28%分を6千億円で売ったら1500億円儲かる計算。一方、日産も直近では2兆円ほどの「動かせる資金」を持つまでに業績は回復しており、6千億円出してルノーから株式を買い取ることは可能。お互いメリットもある話だと私は思う。ただルノーの持ち株比率下がると日産の株主配当率、下がるかも。

 

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4 Responses to “ルノー、日産の持ち株比率を43%から15%まで引き下げ。これ、良いニュースなの?”

  1. アミーゴ5号 より:

    おそるべし、スナールさん。
    つまりルノーにとって日産は、「金の卵を生む鶏ではない」と。もはや茹でガエルの日本メーカーには、価値も未来もないと。この話は、そう言われているように感じます。

    植民地支配からの脱却なら良いのですが、個人的には日本の未来を否定されたようで、背筋が凍るくらい怖ろしいと感じております。

    • 名無し より:

      日本企業は大企業病から脱却できないので
      ルノーの支配から逃れようと逃れまいとすでに手遅れな気がします。
      社長や役員が高齢でメンツもさほど変わらないので保守的な経営で自動車の次につながるビジネスモデルを持っていない。
      トヨタ以外はEVにシフトすると差別化を図ることができずシェアをどんどん落とすのではと思います。
      むしろ下手に日本人が経営するより完全に支配された方が良いのではと考えています

  2. 猫まんま より:

    これってルノーが電気自動車の設立資金欲しさに日産を見捨てたってことじゃないのでしょうか?所有株式15%だったら子会社では無くてただのグループ会社で株式配当はもらえるけどけど役員は送り込めなくなるのであまり口出しは出来なくなるはずです。日産ルノー三菱はすでにプラットフォームの共有化は出来ているため今更新規開発も必要無いだろうしルノーにとってはスケールメリットのみ。まさに吸血鬼ですね。
    よく言えば日産は【独立】するわけですが果たして現経営陣にこの厳しい時代をうまくやっていくだけの能力が有るのか?借金2兆円で潰れかけた時代に逆戻りするのではないかと思います。日産にとって一番の爆弾の労働貴族の問題などは全く解決していないと思うのですが。

  3. 国沢さんに お聞きしたいのですけれども トヨタにはパナソニックという電池メーカーがあります。 日産には中国との合弁電池会社があるけれど、北米では この電池会社を使えるんでしょうか? この頃はバイデン大統領も中国が唯一の競争相手だなんて言ってますけれど。 現代自動車や GM は LGという韓国メーカーがありますが。

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