遠からずLCA規制のため日本で生産したクルマは輸出出来なくなる、と自工会会長は警鐘を鳴らす

記者会見で豊田章男自工会会長はLCAというフレーズを何度も使った。日本の記者さん達からすれば、おそらくナニを心配しているのか理解出来なかったかもしれない。実際。LCAのナニが問題なのかキッチリ説明しているメディアは無し。ということで3日前の”旧聞”ながら、解りやすく説明しておきたい。まずLCAとは「ライフ・サイクル・アセスメント」の略称。

クルマでいえば、走行中に排出する分だけでなく、部品の生産や組み立てまで含めた地球温暖化ガスの排出量を制限しようというもの。基準を満たさない”製品”は輸出入出来ないよう制限が掛けられる。単純明解に書くと「欧州は二酸化炭素出して作ったクルマは輸入を禁止しますよ」ということ。説明するまでもなく日本で作られる部品もクルマも火力発電の電力を使っている。

したがって日本車は輸入禁止です。同じようなコトが今までもあった。アメリカに工場を立ち上げた当初、ミッションに代表される複雑な部品を日本から輸出していた。そんな状況を見たアメリカ政府は「ローカルコンテント法」を作る。アメリカの工場で生産されるクルマの部品はアメリカで調達しろ、というもの。今やアメリカで生産されるクルマの部品の大半がアメリカ製です。

LCAで発生する問題はローカルコンテント法と同じ。二酸化排出して生産しなければならない日本でクルマを作り輸出することが出来なくなるワケ。豊田自工会会長はこのままだと70~100万人の雇用を失うと言う。どうすればいいのか? こらもう政府が猛急でカーボンフリーのエネルギー供給量を増やさなければならない。それをやってるかといえば明らかに「No!」だ。

上の表はクリックすると大きくなります

何もやっていないに近い。おそらく政府としちゃ2050年までにやればいいと思っているのかもしれません。けれどLCAはその前から厳しくなる。遅くとも2030年代中頃には自動車の部品も車体組み立ても再生可能エネルギーだけで作らないと輸出出来なくなると思う。東日本大震災後の10年で太陽光発電能力は10倍の6千万kW程度になった。全電力に於ける割合は8%程度。

水力や風力など自然エネルギーを全て合計しても18%くらいだ(2020年の統計がまだ出ていない)。カーボンフリーを目指すなら、最低で6倍。気まぐれな天気など考えたら、8倍くらいの発電能力を確保し、余った電力は水素にして貯めておくしかない。我が国の場合、ダム作ろうとしたら20年掛かる。というかすでに好適地無し。太陽光発電か風力発電、地熱しか無い。

明日にでも太陽光発電や風力発電の増加計画を打ち出し、一方で地熱発電に向け本格的に動き出さなければ間に合わないということです。なのにスガ氏や「コンビニのスプーンを有料にしたい」などとちっさいことを真剣な顔して発信してる環境大臣に危機感無し--ということを豊田自工会会長は日本の自動車産業の、翻っては日本経済の将来を危惧しているのだった。

ここまで読むと「電気自動車嫌いだ君」達がいかにトンチンカンなことを主張しているのか理解出来ると思う。

 

<おすすめ記事>

コメントは受け付けていません。

このページの先頭へ