向かい風強く

雑誌から「ゴーン体制になって日産が得たモノと失ったもの」という原稿を頼まれた。日本市場に於ける日産の評価はどうかとなれば、厳しい。06年の販売台数を昨年と比べると、トヨタは146万台から141万5千台へと微減。ホンダ41万5千台から48万5千台に増加。日産53万9千台〜44万2千台に大幅減です。

しかし興味深いことに海外での日産の評価は上がる一方である。中国市場など伸び悩むトヨタやホンダを横目に日本勢じゃ一人勝ち状態。苦手だったアメリカも
シェアをジワジワ伸ばし、日本車にとって未開の地である韓国ですらキューブが日本車の人気No1だ。新興国での販売戦略などお見事。

なぜ日本だけ販売台数を落としたか? 日産の国内販売政策が「趣味の対象から道具へ」「クルマ好きから普通の人へ」と販売目標を移したからである。もう少し大
きな観点から書くと、文化から文明へのチェンジです。クルマなんか趣味の対象じゃない。良い道具であればいい、ということなんだろう。

例えばスポーツモデル。GT-Rが目指していることは徹底的な性能の追求であり、官能の追求をせず。職人にゃ尊敬されるものの、普通の人だと理解し難い。例えばデザイン。「新しい提案」ばかり重視し、心に響く美しさは考えておらず。よって新興国では「文明」が評価され、日本だと「文化が無い」となる。

日産の国内戦略を否定すると、当然ながら現在采配をふるっている現役世代を怒らせることになります。逆に海外戦略を「素晴らしい!」とホメたって、私と付き合う部署と全く関係なし。インドネシア担当の人など会ったこともない。国内戦略の悪口を書かなければ嫌われないし、書いても私にとって利益にならない。

さて。日産の中にも「今の状況は良くないと考える」という人が居ます。話を聞くと「至極ごもっとも」。どんな人間だって100%じゃない。ゴーンさんは日本市場についてやはり理解できていないらしく、海外で的確な指示を出すも、日本だとこういった人達は発言の機会が無い。日産のDNAが新興勢力に負けてる。

今の日産の方針に疑問を感じる日産の社内の人達は相当の「悔しさ感」を持ってます。実際、日本の自動車メーカーの歴史を見ると日本市場で種をまいて育て、世界に紹介し売ってきた。日産の国内販売はそのプロセスを否定しちゃってるのだ。国内市場を「おこぼれ」と評価し、効率だけ追求しようとしているワケ。

一人くらい「そら違うぞ!」と言う評論家が居てもいいかと。面白いことにこんな私を応援してくれる日産の方も少なくない(具体的に書くと社内で叩かれるだろうからナイショ)。というか、そういった人が居なければ書く意味無し。全く影響力は無いけれど、日産本来のDNAをホンの少しでも活気付けられたら嬉しい。

明日はFT-86の開発が進み、スバル自身驚くほど良いクルマに仕上がってきた結果、日産以上に「どうなってるんだ!」という社内外の声が多いスバルのドタバタを。

・ECOカーアジアは「VWはついに2気筒制御!

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10 Responses to “向かい風強く”

  1. アミーゴ5号 より:

    20年前からHCR32スカイラインを乗り続けるオーナーとして申し上げたい。
    もう全面的に、おっしゃる通りだと思います。
    以下、思いの丈です。
    今の日産があるのは、日産の濃い血が培ってきた技術や企業文化が基礎にあるから。
    もっと言うと、ゴーン体制は、過去の日産の資産を搾取して成り立っている。
    日産の血をないがしろにすることは、自身の基礎体力を失う事になる事を知るべき。
    デザインも、決して否定するものではない。
    しかし中村さんの著書を読むと「機能美にはこだわらない」的な考えが伺えた。
    「本物には機能美が宿る!」これは紛れもない真実のひとつだと思う。しかし、これを肯定していないから、デザインに芯が感じられないのかとわかり、残念無念。
    お金儲けの文明開化も結構だが、せめて全体の何割でもいいから「クルマ好きの心」「日産の精神」「挑戦&失敗」をもっと大切にするべき。さもないと日産は開発能力を力を失い、ルノー共々衰退すると思う。
    ちなみに、FT−86&BRZ、超期待していました。5人乗りなら20年振りにスカイラインから乗り換えようと思っていましたもん。ゴンゴンは「みんなのFR」を、∞とかいうお金持ちブランド用に囲っちゃってるし。
    先日のイベントで、開発責任者の多田さんが「4WD+ターボ+高性能タイヤ」を否定するところからスタートしたとおっしゃっていたのを聞いて、どれだけ苦難の連続だったか、伺い知ることができました。
    明日も超楽しみです。

  2. さね より:

    日産かあ、自分の中では良くも悪くもない感じです。はっきり言えば興味ないメーカーです。EVもハイブリッドも低燃費車も。まず日産だけではないんですが、イメージは安全性を手抜き、CVTに御執心。デザインはたまーにナイス、昔は硬派な技術集団だったらしい。親父がゆってました。今はなんとなく無難なコスト管理で安物自動車メーカーですイメージは 。て考えると…日本のほとんどのメーカー日産と同じですね。前にゆわれてた話で日本車、空洞化を変えるには?評価の高い小さい外車でも、外車は高すぎる!同じ装備でポロがヴィッツの15万円高いとかなら、ポロ買う人多いと思います。ディーラーを改革して、外車と日本車を気軽に比べられるようになれば、日本車も 変わるかも? まあ、ありませんね絶対… これぐらい妄想めいたことすれば、日産のその謎の人も活躍する日がくるのでは? てゆうかそんなことする人がいないですよね。日本で外車が30%シェアとれる値段にすればなぁ。

  3. 日産ツマラン より:

    私は愛知県に住みながらも免許取得以来、ずーっと父にも勧めて日産ばかり乗り継いで来ました。家族で20台以上乗り継いだヘビーユーザーです。
    しかし、日産は重要顧客を大切にしないのを感じ取れるのですが、趣味性が強いので好んで乗っていました。
    しかしながら、最近は欲しいと思ったクルマが無く、ついに他社のクルマにしてしまいました。

  4. ケースケ より:

    >文化から文明へのチェンジ
    今の車が楽しくない理由は、そこなんでしょうね。。。
    スポーツグレードが分厚いエコタイヤを履いている現状を見て思いました。
    書道教室に入会したら、パソコンのブラインドタッチと習字体フォントのインストール方法教わって帰ったような、残念な感じ。
    1車種だけ、電子制御皆無のクランクとワイヤーで車体を動かす、アナログな車種を出して欲しい。。。と願っています。
    バイワイヤーならクランプとコネクタパチパチするだけで済む組立作業が、機械動作だと何十工程にもまたがる大仕事になるのは知っているのですがw

  5. 阪神ファン より:

    ゴーン体制になってから、日産が失ったもののほうが多いように思います。
    昔、西部警察で使われてる日産車を見て「かっこいい」と思ったものですが、今は・・・です。
    "倒産か"と言われていた状態からルノー傘下で復活し、ルノーに頭が上がらないのか・・・。
    日産らしい車がなくなっている気がします。
    企業ですから利益追求するのはわかるのですが・・・。
    なんか残念な気がしてなりません。

  6. COLT より:

    本来ゴーンさんは「非常時のトップ」として塙さんに招かれたはずでしたよね?
    あれから10年以上経ちました。
    ゴーンさんが今のポジションに居座り続けられるのは他の企業からのオファーがない=経営者としての旬が過ぎた、という事でしょうか?

  7. 真鍋清 より:

    ここ数年停滞が続いた日産も、来年2012-2013年あたりは本格的な巻き返しの正念場と言われている。
    小生個人としては次期ティーダ特に1.6直噴ターボ、ティーダベースの次期ブルーバードシルフィ、そしてメルセデスCクラス系シャーシ応用の次期スカイライン/同ハイブリッドに期待しているがあまりコスト最優先で煮詰めをないがしろにするのであれば過去の繰り返しにほかならず、学習効果が生かされていないと言えるだろう。
    考えてみれば日産というメーカーには歴史的に過去の教訓を生かさず、本格的な技術開発よりもつまらぬ派閥争いにうつつを抜かす傾向が強く、その点はどこかの国の政府と非常によく似ている―自らの立脚点を見据えて行動しないと日産に命はないことを切に警告しておく!
    小生、日産の「負の遺伝子」の集大成としてかつての1970年代半ば〜後半のバイオレット1400/1600(特にハイデラックス/GLのノーマル系はひどい仕上がりだった)、近年ではブルーバードシルフィに現行マーチを挙げておきたい―このようなコンセプトではガラパゴス化をこじらすばかりでなく、栄光ある日産は犬死に向かい我々は日産という貴重なメーカーを一つ失うことになる。それがいかに重大な責任問題か経営陣の皆様は果たしてわかっているのだろうか。

  8. NR500 より:

    901運動の成果?「最後まで舵が効く」の車造りはリーフあたりにもまだ受け継がれている?みたいでその点は嬉しく思いますが
    できれば一車種くらい前澤さんデザインで出してほしいです

  9. ケイイチ より:

    ちょっと違う内容で失礼します。
    以前は話題になっていたアルコール燃料は、その後
    どんな具合なのでしょう。
    今回の被災地は広大な農業地帯、塩害や放射能被害
    など汚染により食用の栽培は出来なくなりました。
    それでは、トウモロコシなどの栽培を目指して開拓
    に移行しアルコール燃料の原材料として本格的に動
    きだしてはいかがでしょうか。
    採算は不明ですが、長年の農業に携わってきた技術
    や情熱が惜しい。しかもエネルギー不足は慢性的な
    状況は変わりません。
    余震の続く汚染地帯も可能な限り風力発電施設を建
    設してみることが望ましいのですが。
    いくら汚染地帯でも、そこで発電される電力は無害
    ですし。建設時に労働者の健康を害する範囲は避け
    るか対処法を新たに構築することで、発電の花畑の
    ような景観が形成できるでしょう。
    映画ひまわり・・・のような果てなく続く花の薗。
    前述のアルコール燃料を精製する際に、除染などは
    どうするか知識がありません。国沢先生はいかが?
    思われますか。

  10. kama2000gt より:

    自身技術者で、メカニカルオタクで、モータスポーツ(サーキット)好きなんですけど、ちょっと前まではやっぱり日産の車に魅力を感じていたのですけどね。
    なので、今は違うメーカの車に乗っています。
    ”あっ、この瞬間が日産車だね”
    このCMに表される時が、一番良かったのかも?!
    (良くも悪くも・・・)

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