日の丸ボブスレー

クルマ好きから見ると、オリンピックで最も「なんで?」と思うジャンルが限りなく自動車に近い道具を使うボブスレーである。TOP奪取こそ難しそうながら(総力戦のF1だって優勝は難しい)、選手もソリも表彰台に上がるくらいのポテンシャルを持っていると考える。なのに競技を見ていると万年テールエンダー。

どうなっているのか? いろいろ調べてみると、大きな原因は「シャシ」にあるようだ。2006年くらいまでの日本チーム、前後の重量配分や4つの「エッジ」のアライメントなど真剣に考えていなかったのだという(理想は50対50。なのに当時は40対60以上のリアヘビーだったそうな)。気合いで滑ろうとしていたらしい。

しかもバンクーバー五輪で使っているシャシは98年の長野オリンピックの前から使っているもの。最も速いドイツチームは自国の『シンカー』というクルマのチューナーが作っているシャシを毎年買っている(上位チームは全てここの車体)。ロシアなど10台も購入し、練習などにも使っているようだ。なぜ日本は12年落ちなの?

予算が無いのだという。じゃシンカーのシャシは高いのかというと、そんなことありません。新品で700万円くらい。シビックのワンメークレース用の車体くらいの価格です。買えないのかと聞いたら「買えない」のだそうだ。今回バンクーバー五輪用に「清水の舞台から飛び降りた気持ち」で投じた改造予算は150万円。

鈴鹿にある『ファブリルチタン工芸』という自動車パーツを作っているショップが担当してます。おかげでイッキに速くなったそうな。それでも「車体を軽く作り、重いドライバーとパッセンジャーが押して加速する」という狙いには届いていない。シンカーのシャシ、カーボン。車体の剛性も圧倒的に高いと言われる。

どうして日本の自動車メーカーやワークス系のチューナーがボブスレー作りを手伝わないかについちゃ知らない。けれど速いシャシを作ろうとすれば、素材や空気抵抗、剛性の解析など先端技術が必要なことは間違いありません。フェラーリなど空洞を貸しているというという。ドイツ勢だって自動車メーカーが絶対バックアップしてる。

オリンピックに企業が協賛しちゃイケナイのかといえば、そんなこと全く無し。ただボブスレーで自動車メーカーの名前が全面に出てしまうと、いろんな問題となるかもしれない。だったらタニマチになったらいいです。株主配当だけで何億も入ってくる豊田章男社長のボケットマネーなんかどうでしょ?

フェラーリの如く公式には全く関係なしと言っているが、なぜかみんな知ってる、くらいのスタンスが望ましい。自分の趣味で海外のレースに出る予算の10分の1くらいを使うだけで、メダルが見えてくるかもしれません。そしたら日本人は豊田章男社長が大好きになりますよ。きっと。

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3 Responses to “日の丸ボブスレー”

  1. ガン より:

    去年は事業仕分けの対象になり、今年はバンクーバー五輪での失態・・・。
    日本のソリ競技の立場はかなり深刻なものになりつつあります。
    日本での競技人口がたった数十名ぽっちともなれば、もはや「お好きな方同士で頑張って下さい」レベルになってしまうのはしょうがないのかも、、です。

  2. あお より:

    金持ちにタカレ、とは言いたくは無いけれど、自動車レースに参戦ばかりがメーカーの”文化に貢献”じゃ無い気がします。
    元々ソリ遊び(ソリレース)の文化の無かった国、日本。
    F1のように日本選手が活躍すれば注目も集め、底辺も広がり有望な次世代もあらわれるかもしれませんね。
    ボブスレー&リュージュの専用コースを冬季稼動させ、開発にも手を貸す。
    社長の道楽でも、走る(滑る)実験室でも良いから、そうなればソチがより楽しみになりますね。

  3. 吸気圧縮膨張排気 より:

    冬季オリンピックは道具を使う競技なので良く見てます。特に道具を(笑)
    なるほど道具の性能差は予算の差が大きいんですね…なんで技術(テクノロジー)に開きがあるのか気になってはいました。
    日本だと「童夢」あたりに依頼すれば良いモノ造ってくれそうですね〜
    予算があれば…

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