SNSで拡散しているブログ「ホンダは全く技術開発をしていない」はホントか?

「新卒で入社したホンダを3年で退職しました」というブログの記事が様々なSNSで拡散している。ここであらすじを紹介するのもなんなので(そもそもすぐ読めます)まだ御覧になっていない方はぜひ。読んだ多くの人が「ホンダって自社で開発していないのか!」と驚き、ダメ出しをしている。けれどこれを書いた人も読んだ人も、根本的な「思い違い」をしてると考えます。

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ホンダに厳しいと言われる私が少し状況を説明したい。まずブログを書いた方は先進安全や自動運転の部門にいたとのこと。この分野、タイヤや変速機などと似ています。タイヤは自動車に必ず付いている部品ながら、開発はタイヤメーカーに丸投げしている。自動車メーカーが行うのはスペック出しと、要求値通り仕上がっているかのチェックです。これ、全メーカー同じ。

変速機も同じ。自動車メーカーはスペック出しをして要求に沿った製品を作って貰う。さらに言えば、エアコンやナビ、シート、ダンパー、ステアリングギアBOX、窓ガラス、外板パーツ用の金型だって外注です。なぜか? 自社で開発するより安定した製品をリーズナブルに買えるからだ。トヨタですら変速機はアイシン。電装品をデンソーに開発までやってもらっている。

ブログを書いた方が担当していた部門もまさしく専門分野。そもそもホンダにカメラなど作る技術無いし、画像を解析して制御にアウトプットする回路だって持っていない。レーダーも自動車メーカーの担当外。世界中の自動車メーカーが自主開発などしておらず。最近だとボッシュやコンチネンタル、モービルアイ、エヌヴィデア、デンソー、デルファイ等々。

なぜ単独でやらないのか? こらもう簡単。スバルは日立とアイサイトを共同開発した。スバルの技術がたくさん入っている。けれど部品は量産しないと安くならないし、バージョンアップも出来ない。だからアイサイトの基本スペック、2014年から基本的に進化しておらず。当時ダントツ性能だったアイサイトながら、日進月歩の電子技術とあり4年立つと遅れてしまう。

ホンダ安全技術の黎明期は独自開発していたが、もはや競争に勝てないと判断。最近はボッシュやモービルアイの技術を導入しているけれど、これは業界の常識だ。素晴らしい自動ブレーキ性能持つマツダもモービルアイだし、世界一の自動運転技術と評価されている日産だってモービルアイとの共同開発である。この分野で「独自開発していない」と憤っちゃダメだと思う。

ここで気になってくるのが「それなら自動車メーカーの技術者は何をしてるか?」ということだろう。解りやすく説明すると、料理人である。魚を捕ったり野菜を作る必要など無いが、魚や野菜の種類や目利きも出来なければならない。顧客が納得するメニューや価格を考え、ビジネスベースに乗せる。簡単なようでいて凄く難しい。広範の経験や知識だって必要になってくる。

料理のテクニックだって重要。料理人のアイデア次第で独創的な料理も出来る。最近私が批判してるCR-Vやフォレスターも狙った市場では素晴らしい売れ行きを見せており、実際、乗ると「いいね!」と思う。個性薄く内容を考えると少し割高では、と批評しているだけ。今回ブログを書いた人と同じような悩みを持っている若手がいるなら、もう少し頑張ってみて欲しい。

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