一般メディアから「GR GTの凄さについて教えてください」という問い合わせがあり困窮

私のような仕事をしていると、けっこうな頻度で手強い電話が掛かってくる。昨日は大手メディアから「GR GTのどこが凄いんでしょうか?」。話を聞くとクルマの知識はないという。こらもう経験値からすれば「しまむら」で売っているバッグしか知らない人にエルメスのケリーバックの凄さを説明するのと同じくらい難易度高いです。とはいえ業界人としての意地もある(笑)

まず”凄さ”のバックボーンから説明する。「2050年のカーボンニュートラルや2030年あたりから厳しくなる燃費規制。騒音規制など考えるとエンジンで走るスポーツカーは作っても数年しか販売出来ない。そんなジャンルのクルマを作れるのは世界中探してもトヨタしかありません」と説明すると、こういったバックボーンは宇宙の話みたいらしく100%理解出来ないようだ。

すると「4リッターV8エンジンが凄いんでしょうか?」と返してきたので「V8エンジンは普通にあります。何ならトラックや船舶用にもあります。4リッターという排気量だって珍しくありません。ただ4リッターという排気量の中で高い出力を出そうとすると技術レベルもコストも膨大になります」。これまた高性能エンジンが全く理解出来ないらしく手応え無し。

今度は「速いんですか?」と聞いてくる。「確かに速いことは速いけれどGR GTより速いクルマだってたくさんあります。GR GTの凄さは、このクルマをベースにしたGR GT3がニュルブルックリンクで行われる市販車ベースの競技車両世界一を決める耐久レースで一番速いクルマになる可能性があるということです」。すると「GR GTは世界一ですか?」。う~ん。解ってくれない。

GT3というカテゴリーはGR GTという市販モデルが無いとダメなんです。したがってGR GTは世界一じゃないし、GT3もF1などより遅く、競技車両の中で一番速いというワケでもない」。ここまでくると一段とGR GTの凄さが解らなくなってしまうらしい。冷静になって考えて見たらGR GTなんかクルマに興味ない人からすれば興味の関心外だと思う。自分の生活と縁ないし。

聞いている人も自分の専門分野じゃなく、おそらく上から調べると言われたんだろう。ブランドバックであれば知っているというので、最後に「日本は今まで1万円のバッグしか作れなかった。それがエルメスやシャネルのような付加価値のあるバッグを作れるようになったということです。クルマで言えばブランドイメージ上がると高額車が売れるようになります」。

犬や猫しか見たことが無い人に象やキリンの説明をする難しさですね。その話を聞いた人が、他の人に象やキリンの説明をしようってんだから世の中厳しい修行かと。

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