鈴木修さんが阻止していたというリニアモーターカーの自動車評論家による試乗インプレッションです

山梨県にあるリニアの実験線に着くと、ちょうど目の前をテスト車両が通過するという。どれどれ、とばかり展望台に行く。2分後、1.5km先にあるという遠いトンネルの出口から白い車両が飛び出してきた、と思ったらエラいイキオイで近づいてくるじゃないの! 「速い!」と驚いている間もなく目の前を傲然と通過! 反対側のトンネルに飛び込んでいってしまった。

写真/山梨県

この間わずか10秒少々。インディやF1も速いけれど、やっぱり450km/hって凄いです! 簡単なレクチャーを受けた後(といっても試乗するにあたっての注意事項は、走り始めたら立たないようにしてください、というだけ)、いよいよ試乗だ! 室内幅は新幹線より一回り狭いが、横4人掛けだから在来線の特急列車くらいのイメージ。

走り出す前、解説担当の方が「今日はまず駅から本線に入ります。軌道を切り替え、東京方向へ300km/hで向かいます。その後、甲府方向へ向けて本日最高速度の450km/hで走ります。甲府側の終点から再び400km/hで戻り終了になります」。なるほど。ということで本線に出るべく走り出したのだが、国沢光宏はすでに驚いてしまっている。思ったより加速いいのだ!

上海リニアは431km/h

後で聞いたのだけど、1秒間にカッキリ5km/hずつ増速するのだという。20秒で100km/h。もちろん新幹線より速く、乗用車が割と元気良く加速するときの加速力だ。また、低速域はゴムタイヤで走ると聞いていたのだけれど、案外乗り心地いい。多少ゴトゴトするけれど、実験用車両としちゃ上々の仕上がり。思ったより完成度高いです。いよいよ本線の走行に入る。

説明によれば「160km/hくらいになると浮上走行に移ります」。スタートすると先ほどと全く同じ加速感。20秒で100km/h。30秒で150km/hに達する。いよいよ浮上か? と思っていたら、車載メーター読み165km/hくらいで(デジタルメーターなのでバンバン数字上がっていく)振動&騒音が消えた。なるほど! ただ正確に表現すると浮くのでなく、少し沈む。

飛行機のようにタイヤが収納され、沈み込みながら地上10cmで浮くのだという。60秒後、300km/hに達した瞬間、一定速となる。意外なことに先頭車両のTVモニター見ない限り速さは感じない。減速はとてもスムース。これまた全く同じ減速Gのまま速度が下がっていく。どこで浮上走行からタイヤ走行に切り替わるのか、とメーター見ていたら130km/hくらいだった。

飛行機の着陸の時のように「キュキュ!」という音と共に軽い振動あるから明確に解ります。いずれにしろ加速と減速はビックリするくらいジェントル。停止後、いよい450km/h走行である! 先ほどと同じくスムースなスタートの後、165km/h近辺で”離陸”し、そのままグングン速度が上がっていく。300km/hは軽く突破、どころか毎秒5km/hの加速が果てしなく続く。

いともたやすく400km/hも超え、90秒後450km/hに届く。するとその瞬間、ガクンと加速感無くなった。聞けば最高速の550km/hまで同じ加速をするのだという。レーシングカーでさえジワジワ最高速に達するのに! 300km/h以上の加速は地上の乗り物じゃ世界一じゃなかろうか。450km/hでの乗り心地ってどうか? 最も近いのは高速エレベーター。

カベの間の空間を走るため、絶えず細かく左右にブレる感じ。もちろんエレベーターと同様、非常に小さいブレなので不快感ないものの独特の乗り味。途中、2kmほど高架の上を疾走する(最初に見た区間)。速いとか速くないというレベルじゃない。「どっひゃ~!」としか表現できぬ。トンネルに入ると登りに掛かり、さらに緩い右ターンを深くバンクして走っているのがハッキリ解った。

楽しい! さて、リニアモーターカーの現実性はいかがなものか? こらもう将来的に”必ず”必要になる乗り物だと思う。御存知の通り化石燃料はそう遠くない将来、枯渇すること確実。となると非常に厳しい立場となるのが飛行機だ。クルマにゃ燃料電池に代表される代替燃料もあるけれど、飛行機のジェットエンジンだけはケロシン(灯油)以外、効率よいエネルギー無い。

2050年までにリニアモーターカーが実用化すれば、飛行機の代わりになるだろう。電気は太陽光発電や風力発電、地熱発電など化石燃料と違い様々なチョイスがある。例えば東京から福岡までリニアモーターカー路線を作ればおよそ1100km。500km/hで走って2時間少々。十分飛行機の代わりになる。いや、日本とヨーロッパ間でさえ1万kmだから20時間だ。

ちなみに500km/hという速度は、大雑把に言えば飛行機の半分のエネルギー使って出せる速さ。飛行機と同等の燃費でいいなら600km/h以上出せるという。となれば日本とヨーロッパ間は16時間だ。燃料電池と並び、将来の重要な技術となることは間違いないと思う。--以上、20年前の2004年に乗った時のレポートです。当時から環境視点ですね(笑)

リニアモーターカーの課題は明日。

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7 Responses to “鈴木修さんが阻止していたというリニアモーターカーの自動車評論家による試乗インプレッションです”

  1. アミーゴ5号リボーン より:

    静岡県知事のなんとかというオッサンは、腹の中では庶民を馬鹿にしている性根の腐った黄昏野郎ですから、とっとと辞めればいい。

    問題は、腐れ知事のリニア反対理由。天下の鈴木修さんが、そんな目先のチンケなコトを言うとは思えません。

    是非とも真偽を明らかにして欲しいし、事実無根ならスズキは名誉毀損の声明を出して欲しい。

    すっかすですね、
    もし事実なら、やはり人間、引き際が肝心だと言わざるを得ませんゾ。

  2. フランス車が好き より:

    JRが開業時期が遅れると言った途端に、川勝知事は区切りがついたと言って辞任することから、反対理由にしていた水や環境問題ではなく開業を遅らせることが目的だったと自白したようなものです。
    スズキというより彼の大好きな国のメンツをたてたかった説が有力かなと思っています。もともとどこかの学長だったし、あっち系の人が多いですからね。

  3. いけだ より:

    次はリニアモーターカーの課題を書く予定ということなので何を書くか予想してみました。

    1つ目は環境問題。
    憲法に環境権が明記されていないこともあり今まではトンネルを掘って水源を破壊しても雀の涙の補償金でお茶を濁してきましたが、
    世界でESGの概念が普及しつつある現在では今までと同じことはできないと思います。

    2つ目は必要性。
    災害への備えという点から移動手段が複数あることはは必要だと思いますが
    リニアモーターカーが実用化にもたついている間に整備新幹線とかいう名目で鉄道網が作り替えられたので
    リニアモーターカーの必要性は薄れてしまったと思います。

    3つ目は推進役の不在。
    リニアモーターカー推進の旗頭に立っていた人が鬼籍に入った今となっては古くてカビの生えたような計画に執着して迷走するような気がします。

    ということで予想を3つあげてみました。
    当たるでしょうか??

  4. トヨタ車ユーザー より:

    リニアのインプレッション、興味深く読ませていただきました。
    そしてこれが、2004年の段階で実用化されていたら、大義通りの物になったのになあと思いました。また、リニアがJR東海だけでなく東日本などと組んで、日本縦断するシステムであったらなあと思いました。
    時は流れて2024年、20年もたって実用化できないのなら、対費用効果も考えて誰だって反対するような気がします。戦艦大和を手遅れだとわかっていながらも作ってしまうよなもの。
    開業ルートも、山をぶち抜いて線路を作り駅を設けてもそこからどうやって市街地へ行くのか。まさか、山に囲まれたリニアの駅周辺が市街地化すると思ったのか。
    人口減→利用者減がわかっているので、リニアのためのリソースを今後は新幹線運営の省人化・効率化に向けるべきだと思います。

  5. 老戦 より:

    葛西氏と鈴木氏が中部経済界の主導権争いで仲が悪かったのは有名な話。
    葛西氏が目標とした2027年開業が現実不可になったことで葛西氏の名誉に泥が付いた訳で、ここら辺が潮時とみたのかも。

  6. はらだ より:

    リニアを飛行機の代わりってのは良い案です。
    飛行機の出発時は、2時間位前に空港に着く感じ位でしょうか?電車なら直前でも大丈夫だから外国行くのも正味は結構早くなる勘定です。
    外国行きの場合は早く駅に来いって事になるのでしょうか?
    リニアで遠距離の問題は海の上ですよね、でも逆に海の中にリニアのチューブが出来たらなら、魚見ながらリニアで旅行なんてマンガの世界の様?

  7. 中村 より:

    鈴木修さんがリニア遅らせているなら、ダイハツの後はスズキのイメージ悪くなるけど?

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